私は長いあいだ、総務・経理・労務・ITをほぼ一人で回す「管理部門の責任者」でした。
月初は集計と報告書、月中は契約と労務の手続き、月末は支払いと請求。その合間に「パソコンが動かない」「この書類どこ?」が割り込んでくる。バックオフィスを少人数で回した経験のある方なら、あの感覚はわかってもらえると思います。
今、私はAIを使った業務システムを自分で構築・運用しています。その立場から昔の自分の机を眺めると、はっきり言えることがあります。
あの仕事の何割かは、今ならAIに任せられた。
この記事では「あの頃AIがあったら真っ先に任せていた仕事」を5つ挙げて、今のAIでどう置き換えるかを具体的に書きます。当時の私と同じ机に座っている誰かに届けば嬉しいです。
この記事でわかること
- 管理部門の仕事のうち、AIに任せられる「作業」と人に残る「判断」の境界線
- 5つの定番業務それぞれの、現実的な置き換え方
- 明日から試せる最初の一歩
その1:月次報告書の「転記と清書」
毎月、複数のExcelから数字を拾い、報告用のフォーマットに転記して、文章を添える。数字を「作る」時間より、数字を「運ぶ」時間の方が長い——これが月初の正体でした。
今ならこうします。 集計の転記はマクロやスクリプトで自動化し、報告書の文章部分はAIに下書きさせます。「先月比でこの数字がこう動いた。考えられる要因はこれ。報告書の所見欄の文章にして」と渡せば、たたき台は数十秒で出てきます。
ここで大事なのは、AIが書くのは下書きまでだということです。数字の解釈と「何を報告すべきか」の判断は人の仕事のまま。でも、白紙とにらめっこする時間は消えます。
その2:議事録
会議が終わってから議事録を整えるのに30分〜1時間。あれは純粋な「作業」でした。
今ならこうします。 録音から文字起こしし、AIに「決定事項・宿題・担当者・期限の4項目に整理して」と頼むだけです。会議が終わった時点で骨格ができている状態にできます。
注意点もあります。社外秘の内容をクラウドのAIに渡すかどうかは、社内ルールの整理が先です(私はこの問題を、外部に出ないローカルAIを自分で構築する方向で解決しました。この話は別の記事で書きます)。
※関連記事:ローカルAI環境の構築方法は只今制作中です。
その3:行政・取引先への定型文書
案内文、依頼文、お詫び、提出書類の鑑文。書き慣れているはずなのに、毎回フォーマットを探して前回の文面を引っ張り出していました。
今ならこうします。 過去の文面を数本AIに見せて「この体裁・このトーンで、今回は〇〇の案内を」と指示します。社名・日付・要件を差し替えた一通目が即座に出てくるので、人は最終チェックだけ。「文面を探す時間」と「ゼロから書く時間」がまとめて消えます。
その4:「あの件どうなってた?」への対応
書類の場所、過去の決定の経緯、手続きの手順。属人化した知識への問い合わせ対応は、管理部門の隠れた大仕事です。私が休むと業務が止まる——あれは組織の弱点でした。
今ならこうします。 規程・手順・過去のQ&Aを文書として整備し、AIに読ませて「社内の質問に答える窓口」を作ります。完璧な回答でなくても、「まずAIに聞く→分からなければ担当へ」の一段を挟むだけで、割り込みは目に見えて減ります。
そして副産物として、AIに読ませるために文書を整備すること自体が、属人化の解消になります。
その5:Excelの「人間がやらなくていい操作」
別シートからのコピペ、表記ゆれの修正、毎月同じ形のグラフ作成。Excelの操作時間の多くは、考える時間ではなく手を動かす時間でした。
今ならこうします。 定型操作はマクロ(VBA)やスクリプトに固定し、その「マクロを書く」工程をAIに手伝わせます。昔はマクロを組める人がいなければ諦めるしかありませんでしたが、今は「この作業を自動化するVBAを書いて」とAIに頼める時代です。専門人材がいない職場ほど、この変化の恩恵は大きい。
ここは私の得意分野なので、具体的な手順は別記事で詳しく書きました。
→ Excelの転記・集計をAIで自動化する方法【毎月90分→5分の実例で解説】
任せられないもの:判断と責任
5つ挙げてきて、共通点に気づいた方もいると思います。AIに任せられるのは、どれも「作業」です。
- 数字の解釈、報告の優先順位 → 人
- 会議で何を決めるか → 人
- 文書を出すか出さないかの判断 → 人
- 例外対応、責任を取ること → 人
AIは管理部門の仕事を奪いません。管理部門の人を「作業員」から「判断する人」に戻してくれる——一人で回していた当時の私が一番欲しかったのは、まさにそれでした。
最初の一歩はどれからでもいい
5つ全部を一度にやる必要はありません。おすすめは「その3:定型文書」です。導入コストがほぼゼロ(ChatGPTなどに過去文面を見せるだけ)で、効果を当日に体感できるからです。
「うちのこの作業、AIでなんとかなる?」という段階のご相談も歓迎です。管理部門の言葉のまま聞いてください。専門用語への翻訳はこちらでやります。

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